いちごの土作りをはじめ、苗の植え付けから収穫までの管理方法を画像を交えて野菜栽培士が詳しくレクチャーします。失敗なしで立派ないちごを育てましょう!
目次
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栽培難易度 ★★★★★
いちごは秋から翌年春までと栽培期間が少し長めですが 栽培のコツとポイントが分かれば、家庭菜園でも上手に育てることができます。
採れたてフレッシュな果実の味は格別です。いちご栽培にぜひチャレンジしてみましょう 。
いちごはバラ科の多年生作物で、北アメリカ東部やチリ南部が原産地です 日本へは江戸時代後期に初めてオランダから伝わり、 明治時代に入ると、イギリスやアメリカなどからも導入されました。
日本で本格的に栽培が始まったのは、昭和20年以降になってからです。
現在栽培されているいちごは 18世紀にオランダで、バージニアいちごとチリいちごから育成された品種です。
いちごは種からも育てられますが、形質が均一な苗から育てるのが一般的です 栽培方法は通常の露地栽培のほか、促成栽培や半促成栽培があります。
促成栽培は加温ハウスなどを使う上級者向けの作型なので、ここでは通常の露地栽培と半促成栽培を解説します。
科名 | バラ科 |
別名 | いちご・苺・伊致寐姑・一比古 |
草丈 | 20~40cm |
連作障害 | なし |
適した場所 | 日がよく当たる風通しの良い場所 |
日当たり | � |
生育適温 | 15~20℃ |
植え付け時期 | 9月~10月 |
収穫時期 | 苗の植え付けから約6か月 |
いちごは適温内なら通年の栽培が可能です。植え付け適期は9月~10月で、収穫までは植え付けから約6か月です。
苗の植え付け適期は、露地栽培や半促成栽培では 寒くなる前の10月中旬から下旬頃が目安です。
11月以降の低温期になると苗が休眠期に入って、植え付けに失敗することがあります。寒くなる前に根が活着するように適期に植え付けましょう。
促成栽培では定植時の早晩によって収穫のスタート時期が変わるので、品種にもよりますが、7月頃に苗取りを行い、9月頃には子苗を定植します。
花芽分化を確認したら早めに植え付けましょう 。
いちごの品種には、春に開花結実する一季成りと 1年中開花結実する、四季成りがあります。
四季成りは一季成りと比べて草勢が弱くて果実が小さいものが多かったのですが、今では品種改良が進み、ペチカやスイートチャーミーなど 草勢が強くて品質の良い果実が採れる品種がたくさん出回っています。
育てやすい品種は、露地栽培向けの宝交早生、ダナー、アキタベリー よつぼし、タンゴなどで、促成栽培向けの品種には、とよのか、とちおとめ、さちのか
あまおう、章姫、やよいひめ、ひにしずくなどがあります。
中でもとちおとめや章姫は苗が入手しやすく、味も良い人気の品種です。
促成栽培向けの品種を上手に育てるにはビニルハウスや温室などが必要になるなるため、比較的育てやすい露地栽培や半促成栽培向きの品種で耐病性の高いものを選ぶと失敗が少なくなります。
葉の裏側にあるクラウンが太く、茎ががっちりとしたものが良い苗です。
また、ウイルスフリーと書かれた苗を選ぶようにしましょう
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いちご栽培に適したコンテナは標準サイズ(60cm以上)がおすすめで、1つのコンテナで2~3株程度栽培できます。
1株植えなら10号程度の植木鉢でも栽培は可能です。
いちごは上手に育てると一株から20個前後の果実を収穫できるので、必要な株数からコンテナサイズを決定しましょう。
苗取りすることを考慮したいちご専用のコンテナもあります。
いちごは乾燥に弱いので、保水性の高い用土で栽培しましょう。市販の培養土なら袋からあけてすぐに植え付けできて便利です。
甘みを増す養分が含まれたいちご専用の培養土もあるので、栽培が初めての方は、専用品を利用するのもおすすめです。
自分で用土を配合するときは 赤玉土7:腐葉土2:バーミキュライト1 それに用土10ℓあたり、苦土石灰10gと 普通化成肥料10~20gを混ぜ合わせたものを用意しましょう。
植え付けの2週間前には土作りを済ませておきます。
水やりの際などに用土が溢れて周辺を汚してしまうので コンテナに用土を入れるときは、ウォータースペースを残して 鉢の上部から数センチ程度低くしておくのがポイントです
。
露地栽培では植え付けの2週間前になったら 苦土石灰で酸度調整をしてから用土を丁寧に耕しておきます。
いちごがよく育つ土壌pHは6.0~6.5です pHを1.0上げるには、苦土石灰が1㎡あたり400g(60cmのコンテナだと約50g)が目安です。
植え付けの直前に石灰を入れると根を傷めてしまうので注意しましょう。
植え付けの1週間前になったら、1㎡あたり堆肥2kgと、普通化成肥料100gを畑の全面にまいて、用土と軽く混ぜ合わせてから畝を立てておきます。
いちご栽培に適した畝は、果房を外側に着けさせる外成り方式と、果房を内側に着けさせる内成り方式があります。
内成り方式の場合は、高さ10~15cmの平畝で 2条植えする場合の畝幅は、90~100cmです。
外成り方式の場合は、高さ25~30㎝の高畝で 2条植えする場合の畝幅は、60~70cmです。
それぞれの畝幅は条数に応じて調整しましょう。
いちごは一定の耐寒性がありますが乾燥に弱いので 畝を立てた後は黒マルチで被覆して、土壌の乾燥を防止しておきます 。
いちごは春植えと秋植えができますが、収穫を早くしたいときは 秋に苗を植えて翌年の春に収穫する一季成り種か 春に植えて夏に収穫する四季成り種がおすすめです。
一季成り種を春に植えると、収穫までに1年以上かかります。
長期の栽培になるほど病害虫の被害に遭いやすいので いちご栽培が初めての方は、一季成り種の秋植えからチャレンジしてみましょう。
いちごは親側のランナーの反対側に果実が着く性質をしています。
そのため、親側のランナーを同じ向きに揃えて苗を植えると 同じ方向に果実が着くので収穫しやすくなります。
内成り方式の場合は親側のランナーを外側に向けて、外成り方式の場合は内側に向けましょう。
ポットから苗を取り出す時は根鉢を壊さないように、裏の穴に指を入れて苗を押し出すようにして抜き取ります。
ポット内で根が絡まっていたり、根詰まりしていたりするときは 軽く根鉢を崩してから植え付けると 根の活着が良くなって、植え付け後の苗の生育も良くなります。
苗を植え付けるときは、植える深さも大事なポイントです。クラウンと呼ばれる成長点となる新芽の部分が少し隠れる程度に植えましょう。
浅植えで根鉢が地上面から出ていると、根の活着が遅れて生育が悪くなってしまいます。
春になって気温が上がり始めると新葉の伸長が始まります。冬の低温に当たって、枯れたり萎れたり、褐色に変色した茎葉は 新葉の発生を促すために早めに摘み取っておきましょう。
また、開花と結実が始まるとランナーが次々と伸びます ランナーを伸ばすと養分と水分が開花や結実に回らなくなるので、収穫前と収穫中に伸びるランナーは、全て摘み取ってしまいましょう 。
いちごは低温に強い野菜で、晩秋から冬前に開花することがありますが、厳寒期に咲いた花は、霜に当たって果実が肥大せずに終わります。
また、開花や結実には大きなエネルギーを使ってしまうので 低温期に咲いた花や蕾は必ず摘み取りましょう。
摘花と摘蕾をしっかりと行うことで、茎の太い大きな株を育てることができ 春以降の収穫量がぐんと増えます 。
いちごは放任で栽培すると過繁茂になって 開花や結実に養分が回らなくなり、収量が減ってしまいます。
頂花房の開花期に、各茎葉の根元にある脇芽を2つ残して 後から伸びる脇芽はすべて摘み取ってしまいましょう 。
いちごは一定以上の高温と長日で開花が始まります。
花粉は昆虫などによって運ばれて自然と受粉しますが、昆虫の少ない市街地やマンションの高層階・冬期にハウスや温室などで促成栽培しているときなどは、うまく受粉できないことがあります。
自然な受粉が難しい環境下にあるときは、毛の細かいブラシや耳掻きの羽毛の部分を使って花の中心部を軽くこするようにして人工的に受粉させましょう。
受粉に失敗すると奇形果の原因になります。
奇形果の種類には、開花直後に受粉がなくなったときに起こる先つまり果、開花後遅い時期まで受粉が続いたときに起こる先青果、開花から受粉までに時間がかかった時に起こる基部不稔果があります。
奇形果は他の健常な果実の肥大に影響するので、小さなうちに摘み取ってしまいましょう 。
いちごは11月に入って気温が10℃を下回ると、休眠期に入り、株が次第にわい化します。ちなみにわい化とは、植物が固有の大きさに成長せずに成熟することです。
余談ですが、いちごの生育や開花結実は温度と日長で決まるので、いちご農家の場合、休眠の浅い品種は、冬期に電照やジベレリン処理をして、わい化や株疲れを防止して大苗に育て、12月頃から収穫しています。
いちごの休眠は10℃以下の短日で始まり、11月下旬にもっとも深くなります。その後は5℃以下の低温に当たると打破されて、ほとんどの品種は1月中には休眠打破は完了しています。
家庭菜園の場合はこれらの栽培方法はハードルが高いので、冬の間に収穫したいなど、特別な理由がなければ促成栽培はしなくても大丈夫です。
いちごには一定の耐寒性があるので、特別な保温設備はなしで育てましょう。寒さで茎葉が傷むことはあっても、芯まで枯れることはありません。
冬期の間に行う管理は基本的に水やりのみです。いちごは乾燥を嫌うため、低温期の間も水切れしないようにします。
ただし、厳寒期は水分量や回数は控えめにして 気温が高い日の日中に与えるようにしましょう 。
いちごは半促成栽培をすると収穫期間を長くすることが可能です。
ちなみに促成栽培とは、加温や保温によって作物の生育を早めて 通常よりも早い時期に収穫するための栽培方法のことで、一定の期間だけ促成栽培することを半促成栽培と言います。
いちごは寒さに強い野菜ですが、休眠から覚めて地上部の伸長が始まってからは低温に弱くなります。
特に花芽は低温に弱いので、保温開始が早いと開花期に低温障害に遭ってしまいます。トンネル掛けは収穫が早まるだけでなく、花芽の低温対策にも有効な手段になります。
休眠が明けて新芽の伸長が始まる2月上旬から中旬頃に設置しましょう。
半促成栽培するときは、保温初期は30~35℃の高温下で管理しますが、花芽が見え始めたら日中は20~30℃以下、夜間は5℃以上に温度を維持します。
開花以降は低温障害のほか、高温障害も起こりやすいので、日中の気温が20~25℃になるように、トンネルの裾をめくって換気を行いましょう。
トンネル内は昼夜で急激に温度が変化します。そのため、朝と夕方の開閉作業が重要なポイントになります。開花結実が盛んになる4月以降は高温障害になりやすいので
霜の心配がなくなったら、トンネル掛けは撤去しておきます。
半促成栽培は温度管理が難しいですが、収穫期間が1か月以上伸びて収量が増えるので 栽培に慣れてきたら、ぜひチャレンジしてみましょう 。
いちごは成長にあわせて水やり方法を変えます。種まき後(苗の植え付け後)から約1週間程度はこまめに水やりをしますが、その後は用土の表面が乾いたタイミングで水やりをしましょう。
苗を植え付けてから根着くまでの約1週間程度はしっかりと水やりを行います。
活着後の水やりは、用土の表面が乾いたタイミングで与えましょう。
いちごは乾燥に弱いので、用土がカラカラになるほど乾燥させないように注意します。
冬の間も用土の表面が乾いたら水やりを行いましょう。
果実が肥大するにつれて吸水量が増えていくので、開花が始まったら水分量を少しずつ増やしていきます。
1株の1回あたりの水分量は、植え付けから開花開始までは0.5ℓ、開花が始まったら1ℓまで増やし、収穫後半にかけて2~3ℓまで徐々に増やしていきます
。
水やりのコツとヒント 水やり時の泥の跳ね返りは、病害の発生を助長します。用土の跳ねが茎葉にかからないよう、丁寧に水やりをしましょう。
もみ殻などを株元に敷いておくと、土壌の乾燥対策になり、泥の跳ね返りも防げます 。
いちごは開花後から、窒素とカリの吸収量が多くなります。植え付けから開花が始まるまでの期間は、緩効性の元肥を中心に育てて、開花から収穫が終わるまでの期間は、追肥で草勢を維持するイメージです。
追肥は収穫までに2回ほど行います。
1回目は新芽の伸長が始まる直前の2月中旬から下旬頃で、2回目の追肥は開花が始まる直前です。
露地栽培では普通化成肥料を1㎡あたり約20g、列間に直線にまいて 表面の用土と軽く混ぜてから株元に寄せておきます。
マルチをしている場合は、1株あたり普通化成肥料を3~5g マルチの穴から指を入れて施しておきます。
コンテナ栽培では、1株あたり普通化成肥料を3~5gをまいて 表面用土と軽く混ぜ合わせてから株元に寄せておきましょう。
いちごは収穫が始まる頃になるとランナーが伸びて、6月頃になるとその先に子株ができます。 この子株を秋までポットで育苗すれば、来年以降の親株として利用できます。
子株は親株の性質を引き継ぐので 果実の質が良かった親株のランナーを残しておき、子株を育てましょう。
ランナーを残しておくと、次回の植え付けのときの目印になります。
子株はランナーからすぐに切り離さず、培養土をいれたポリポットや小箱の上において スタップルや針金を曲げたものでランナーを用土に固定しておきます。
苗が根付いたことを確認したら、孫株側のランナーは根元で切り取り、親株側のランナーは2~3㎝残してハサミで切り取ります。
収穫のタイミングや収穫の目安を知って、もっとも美味しい頃合いに収穫しましょう。
いちごは開花してから、低温期は40~60日、高温期は25~30日で収穫適期になります。果実が赤く熟したものから次々と収穫しましょう。
果実をやさしく持って、果柄の近くをハサミで切り取って収穫します。傷みが早くなるので、果実を傷つけないように収穫しましょう。
品種や作型によって収穫時期は変わり 促成栽培は12月頃から、半促成栽培は2月下旬頃から、露地栽培では4月頃から収穫が始まり、5月下旬頃まで収穫が続きます。
いちご栽培で発生しやすい病害は、炭そ病、灰色カビ病 うどんこ病、萎黄病、萎凋病などで、特に多いのは灰色かび病とうどん粉病です。
病害が発生する条件は、高温多湿が続く・低温多湿が続く・連作をしているなどです。
収穫期に降雨が多いと灰色かび病が発生しやすく、乾燥が長く続くとうどん粉病が発生しやすくなります。
カビによる病害が多いので、栽培地の排水対策をしっかりしておきましょう。
発生してから治療するのではなく、病害が発生しない栽培環境を目指すことが大切です。
病害にかかった株の残渣を用土にすき込むと 病原菌が残って次に植える野菜の感染源になります。必ず場外で処分するようにしましょう。
病害は早期発見、早期治療が大切です 手に負えなくなる前に薬剤の利用も検討しましょう 。
いちごは栽培の大半が低温期なので、害虫の被害には比較的遭いにくいですが 小苗の育苗中の春から秋にかけては害虫の被害が出やすい時期です。
特に発生しやすいのはアブラムシ、ナメクジ、ハダニ、ヨトウムシ、コガネムシなどです。
害虫の被害に遭っていないかこまめに観察して、数が増える前に早めに駆除しておきましょう。
防虫ネットのトンネル掛けは、多くの害虫防除に有効な対策です。
害虫被害が多い場所で栽培する時や、予め被害を防ぎたい時は早めに対策を行っておくようにしましょう。