キンジソウは春から秋が栽培時期で植え付けから収穫まで約2か月です。種採りが難しいため、苗または挿し木から育てます。収穫までの作業は水やり・追肥・土寄せ・マルチングなどです。
キンジソウの育て方を野菜栽培士が詳しく解説します。
種まき適期や植え付け適期・収穫適期など栽培時期と土作り・種まき・苗作り・肥料の与え方・水やり方法・収穫までの栽培管理、病害虫対策など、画像と動画を使って丁寧に解説しています。
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栽培難易度 ★☆☆☆☆
キンジソウ(金時草)は栽培の手間がかからず病害にも強い育てやすい葉野菜です。種を採るのが難しいので、苗や挿し木から育てましょう。
キンジソウは熱帯アジア原産のキク科の多年草で、漢字で書くと「金時草」です。葉は表が緑色、裏が紫色で、茎がほふくして成長するのが特徴です。
春から秋まで長く収穫が楽しめて、柔らかな若い芽を食用に使います。ビタミンやミネラルを多く含み栄養価が高く、お浸しや和え物などに利用できます。
キンジソウは加賀野菜のイメージがありますが、江戸時代中期に熊本県の水前寺地方に渡来して日本中に広まり、別名では「スイゼンジナ」とも呼ばれています。
熊本の特産野菜として昔から茶席の料理などに珍重されてきた野菜で、茹でるとぬめりが出てワカメのような味わいがします。
キンジソウは花がめったに咲かないため採種が難しく、苗や挿し木から育てるのが一般的です。スーパーで野菜として買ってきたものでも増やすことができます。
キンジソウは栽培管理が少なく、基本的には追肥と水やりのみでも簡単に育てられます。乾燥にやや弱い一面がありますが、高温期前に敷き藁をする程度です。
多年草で冬になると地上部は枯れてしまいますが、宿根性のキンジソウは冬越しさせることが可能です。翌年の春になるとふたたび新芽が出て収穫ができます。
科名 | キク科 |
別名 | スイゼンジナ・水前寺菜・ハンダマ・式部草など |
草丈 | 40~60cm |
連作障害 | あり(1~2年) |
適した場所 | 日がよく当たる風通しの良い場所 |
日当たり | 🌞 or 🌤 |
土壌酸度 | pH6.0~6.5 |
株間 | 30cm~50cm |
条間 | 50cm以上 |
発芽適温 | 20~30℃ |
生育適温 | 20~25℃ |
種まき時期 | 苗から育てます |
発芽日数 | ― |
苗植え付け時期 | 4月~6月 |
収穫時期 | 植え付けから約2か月 |
キンジソウの栽培時期は春~秋にかけてです。苗の植え付けは4月中旬~6月下旬で、収穫までは植え付けから約2か月です。
キンジソウは在来種の1品種のみですが、さまざまな商品名で販売されています。基本的にはどの商品を選んでも栽培方法や育てやすさに違いはありません。
キンジソウは在来種の1品種のみで、採種が難しいため苗を購入して育てます。
種苗メーカーからは「キンジソウ」のほか、「スイゼンジナ(水前寺菜)」や、「金時草」、「ハンダマ」といった商品名で苗が販売されています。
キンジソウはプランター栽培と露地栽培が可能で、直植えとポットで育苗してから畑に移植する方法があります。
キンジソウの栽培をはじめる前にしておくことは、プランター栽培では「プランターと栽培用土の準備」、露地栽培では「土作り」と「畝作り」などです。
キンジソウ栽培で利用するプランターサイズは中型(60cm)以上のものを利用しましょう。1株植えなら10号サイズ以上の深型の植木鉢でも栽培ができます。
品種にもよりますが、中型サイズのプランター1つに対して1~2株程度の栽培が可能です。
キンジソウ栽培で使う用土は市販の培養土を利用すれば土作りの必要がなく袋から開けてすぐに使えるのでとても便利です。
自分で用土を配合するときは、赤玉土(7):腐葉土(2):バーミキュライト(1)を混ぜたものを使いましょう。
そこに石灰を用土10Lあたり10~20gと化成肥料を用土10Lあたり10~20gを入れてよく耕しておきます。
プランターや植木鉢の底には、水はけを良くするために赤玉土や鉢底石などを数センチほど敷き詰めておきます。
種から育てるときは淵から5cmほどの位置まで用土を入れ、苗から育てるときは根鉢の高さを考慮して用土を入れておきましょう。(根鉢を置いてから残りの用土を足します。)
キンジソウの露地栽培の土作りは種まき(苗の植え付け)の2週間前に終わらせておきましょう。苦土石灰100g/1㎡をまいて全体に混ざるように丁寧に耕しておきます。
種まき(苗の植え付け)の1週間前になったら、堆肥(2㎏/㎡)と化成肥料(100g/㎡)を畑の全面にまいて良く耕しておきましょう。
キンジソウ栽培で作る畝は、畝幅は50cm(1条)70~80cm(2条)で畝の高さは10~15cmの平畝です。
キンジソウは種からではなく苗から育てるのが一般的です。春になると園芸店などで売られる苗を購入して育てましょう。苗からだと収穫まで簡単に辿り着けます。
キンジソウは、節間が狭く茎が太く葉の色が濃いもの、害虫や病害の被害に遭っていないものが良い苗です。本葉が3~5枚になったものが植え付けに適した苗の大きさです。
キンジソウの苗の植え付け適期は、4月~6月です。
※植え付け適期は栽培地の気候などによって前後します。
キンジソウは20℃~25℃が生育がもっとも良くなる温度です。
キンジソウの苗を植える間隔は30~50cmです。
キンジソウは挿し木(挿し芽)からも簡単に育てることができます。挿し木は難しくありませんが、挿し木前の準備と挿し木後の管理をしっかりと行いましょう。
キンジソウは栽培中の株から切り取った茎葉や野菜として買ってきたものから簡単に挿し木(挿し芽)栽培ができます。
キンジソウの挿し木の適期は、春(4月~6月)と秋(9月~10月)です。
※挿し木の適期は栽培地の気候などによって前後します。
キンジソウは20℃~25℃が挿し木に適した気温です。
キンジソウは根が地上に露出すると太陽光で根を傷めてしまい、生育不良の原因になってしまいます。タイミングよく株元に土を寄せておきましょう。
水やりや降雨で用土は自然に減ってしまいます。根元周りの用土が減ってきたと感じたら土寄せをしましょう。
根が完全に露出すると株の生育に影響するので早めに土寄せするのがポイントです。
株周りの固くなった用土の表面を軽くほぐしてから株元に寄せておきます。プランター栽培では用土が減ってきたら新しい用土を足しましょう。
キンジソウは極度の乾燥を嫌う野菜です。夏前(梅雨明け)にマルチングをして乾燥を防止しましょう。
キンジソウはやや乾燥に弱い一面があるので乾燥対策にマルチング栽培がおすすめです。極度の乾燥と多湿を繰り返すと、株の生育も悪くなってしまいます。
マルチングはビニルマルチと敷き藁どちらでもかまいませんが、水やりなど管理の手間を考えると敷き藁がおすすめです。
キンジソウ栽培では夏場以降の雑草取りが大変になります。マルチングをすることで雑草対策にもなります。
キンジソウの保温対策にはトンネル掛けが有効です。保温すれば冬季でも収穫を続けることが可能です。
キンジソウは多年草なので温暖地ではトンネル掛けをすれば晩秋以降も収穫を続けられます。
10月以降になって日中の気温を15℃を下回るようになると新芽が出なくなります。
また霜が降りると株が枯れる原因になるため、透明のビニール掛けをして霜対策と保温対策をしましょう。
キンジソウは成長にあわせて水やり方法を変えます。種まき後(苗の植え付け後)から約1週間程度はこまめに水やりをしますが、その後は用土の表面が乾いたタイミングで水やりをしましょう。
キンジソウは極度の乾燥を嫌います。用土の表面が乾いたときが水やりのタイミングです。
乾燥と多湿を繰り返すと株が弱るので、用土の中までカラカラに乾いてしまう前に水やりをしましょう。夏場の敷き藁は乾燥対策に有効です。
種まき後や苗の植え付け後の約1週間は水切れにならないようにします。用土の表面が乾いたタイミングでこまめに水やりをしましょう。
プランター栽培では1回の水やりで鉢底から染み出るくらいたっぷりと与え、露地栽培では1株あたり1.5~2Lが目安です。表面だけでなく用土の中に染み込むまで与えましょう。
キンジソウの追肥は株の成長に合わせて与える肥料の種類と与える量を調整しましょう。キンジソウは根の先端からもっとも吸肥します。プランターの淵や、畝間や株と株の間に肥料をまいて表面の用土と混ぜ合わせておきます。
キンジソウの追肥時期は、苗を植え付けてから約2週間後から、種から育てている場合は最後の間引きが終わった頃からスタートさせます。
追肥をはじめる目安は草丈が20cmを超えた頃です。
その後は茎葉の状態を見ながら1ヶ月に1~2回の頻度で与えましょう。葉色が薄くなったときや新葉が出なくなったときは肥料不足のサインです。
生育初期から収穫までチッソ分の割合が多めの即効性のある肥料を与えて株を大きく育てましょう。
1株あたり5~10gを与えましょう。用土全体に肥料をまいて軽くほぐしてから株元に土寄せしておきます。
薄めた液肥を1週間に1度のタイミングで水やりを兼ねて与えてもかまいません。
1㎡あたり20~30gを与えましょう。列の両側に肥料をまいて用土をほぐして株元に土寄せしておきます。
キンジソウの収穫のタイミングや収穫の目安を知って、もっとも美味しい頃合いに収穫しましょう。
キンジソウは苗の植え付けから約2か月で収穫適期を迎えます。2週間に1回のペースで収穫することができます。
キンジソウの収穫時期を見た目で判断するときは、草丈が30cmを超えたときが収穫のタイミングです。
キンジソウは柔らかな新葉を利用します。先端から15~20cmのあたりをハサミやナイフで切り取って収穫します。手で摘み取ってもかまいません。
最初の収穫で主茎(中央の太い枝)を切ることになりますが、主茎を切ることで側枝(横から伸びる枝)がつぎつぎと出るようになるので心配はいりません。
ただし、株が小さい時期に茎葉を大量に摘み取ると株が弱ってしまうので新芽が勢い出るようになってから収量を増やしましょう。
キンジソウは初夏から秋まで収穫を続けられます。晩秋になって気温が下がると新芽が出なくなり、最後は株全体が枯れてしまいます。
10月を過ぎて新芽が減ってきたら収穫をストップします。冬越しまでに株と根を充実させて翌年に備えましょう。
キンジソウ強靭な野菜ですが、まれに病害が発生します。病害の前兆を早く見つけることが大きな被害を防ぐことにつながります。早期の治療と再発防止対策をしっかりと行いましょう。
キンジソウが掛かりやすい病害は「炭そ病」「青枯れ病」「ウイルス病」「カビ病」などです。
キンジソウが病害に掛かる主な原因は、日当たりが悪い、株元の葉が込み合って風通しが悪い、畑の排水性が悪く多湿になっている(または水やりが多い)などです。
キンジソウの病害の発生を予防するためには、多湿を避ける、日当たりのよい場所で育てる、適正な株間の確保を行う、用土を丁寧に耕して水はけの良い土壌作りを心掛けましょう。
収穫前に害虫の被害に遭うと収量に大きく影響します。害虫を見かけたら早期に駆除することが被害を最小限に抑えるポイントです。害虫対策をしっかりと行って、害虫の集まりにくい環境を目指しましょう。
キンジソウに発生しやすい害虫は、「オンブバッタ」「アブラムシ類」「ヨトウムシ」「コナカイガラムシ」「ハダニ」などです。
害虫は大きくなる前や数が増える前に早期に駆除することが大切です。葉の裏もよく観察して卵や幼虫を見つけたらすぐに捕殺しましょう。
栽培時に出る残渣(落ち葉や枯葉)はこまめに撤去し、株元が込み合ったら摘葉して風通しを良くすることで、害虫の住処をなくすことができます。
キンジソウの苗が小さい時期のトンネル掛けや不織布掛けは、害虫の飛来を予防する上でかなり有効な方法です。
自分の畑だけを対策しても、周辺の無対策の畑や雑草地に囲まれている畑などから害虫は次々と飛来してくるからです。
害虫の数が増えて自力で駆除できなくなる前に、人体への影響が少ない薬剤を使うことも検討しましょう。
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