キクイモは春から秋が栽培時期で収穫まで約6か月です。深さ10~15cmに種芋を植えて、発芽後は本葉が触れ合うタイミングで芽かきをします。収穫までの作業は支柱立て・土寄せ・水やり・追肥などです。
キクイモの育て方を野菜栽培士が詳しく解説します。
種イモの植え付け適期や苗の植え付け適期・収穫適期など栽培時期と土作り・苗作り・種イモの植え方・肥料の与え方・水やり方法・収穫までの栽培管理、病害虫対策など、画像と動画を使って丁寧に解説しています
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栽培難易度 ★★☆☆☆
キクイモは土壌適応性が高く手間もかからないため栽培難易度が低い育てやすい根野菜です。草丈が2m以上になり茎葉が折れやすいので、支柱を立てて倒伏防止をすることが失敗しないポイントです。
キクイモは北アメリカからメキシコを中心とした熱帯中南米原産のキク科の根野菜です。乾燥に強く高温を好みます。
漢字では「菊芋」と書くように秋になると黄色の菊に似た美しい花を咲かせて畑を彩ります。
キクイモは水はけがよく日当たりのよい場所でよく育ち、植え付けから約2か月で草丈が1m以上になります。そのため、植え付けるときは他の作物が日陰にならないように配置することがポイントです。
キクイモは倒伏しやすいので、土寄せと支柱を立てて対策をしっかりと行って栽培しましょう。繁殖力が強く残り芋からでも根付くので、収穫時の掘り残しには注意します。
芋という名前が付いていますがでんぷん質は含んでいないため、とてもヘルシーな野菜です。生食料理と加熱料理ともに利用できます。
味は芋類ほどの甘みではなくほんのりした甘みです。食感は蓮根に似ていて、ゴボウのような味と風味です。熱を加えると甘みが増すので、揚げ物・炒めもの・汁の具などの加熱調理がおすすめです。
科名 | キク科 |
別名 | アメリカイモ・ブタイモ・カライモ・サンチョーク・エルサレムアーティチョーク・トピナンブールなど |
草丈 | 150~200cm以上 |
連作障害 | あり(1~2年) |
適した場所 | 日がよく当たる水はけの良い場所 |
日当たり | 🌞 or 🌤 |
土壌酸度 | pH6.0~6.5 |
株間 | 60cm以上 |
条間 | 80~100cm |
発芽適温 | 15~20℃ |
生育適温 | 15~25℃ |
植え付け時期 | 4月~5月 |
発芽日数 | 14日~21日 |
収穫時期 | 植え付けから約6か月 |
キクイモの栽培時期は春から秋にかけてです。苗の植え付けは4月中旬~5月中旬で、収穫までは種芋の植え付けから約6か月です。
キクイモには分化した品種はありませんが、赤系と白系の芋があります。基本的にはどちらを選んでも栽培方法や育てやすさに違いはありません。
キクイモの品種は在来種のみですが、北米~中南米原産の白系のキクイモとヨーロッパ系の赤系(紫系)があります。
園芸店などでは、アメリカイモ・ブタイモ・カライモ・サンチョーク・エルサレムアーティチョーク・トピナンブールといったさまざまな名称で種芋が販売されています。
どれを選んでも育てやすく栽培方法や難易度は変わりません。
キクイモはプランター栽培と露地栽培が可能で、直まきとポットで育苗してから畑に移植する方法があります。
キクイモの栽培をはじめる前にしておくことは、プランター栽培では「プランターと栽培用土の準備」、露地栽培では「土作り」と「畝作り」などです。
キクイモ栽培で利用するプランターは大型で幅広のサイズを利用しましょう。キクイモは草丈が高くなるので、小さいサイズのプランターだと鉢ごと倒れる可能性があります。
1株植えなら12号サイズ以上の深型の植木鉢でも栽培ができます。重量のある鉢を利用するのがポイントです。
キクイモ栽培で使う用土は市販の培養土を利用すれば土作りの必要がなく袋から開けてすぐに使えるのでとても便利です。
自分で用土を配合するときは、赤玉土(5):堆肥(2.5):腐葉土(1.5):バーミキュライト(1)を混ぜたものを使いましょう。
そこに石灰を用土10Lあたり10~20gと化成肥料を用土10Lあたり10~20gを入れてよく耕しておきます。
プランターや植木鉢の底には、水はけを良くするために赤玉土や鉢底石などを数センチほど敷き詰めておきます。
種から育てるときは淵から5cmほどの位置まで用土を入れ、苗から育てるときは根鉢の高さを考慮して用土を入れておきましょう。(根鉢を置いてから残りの用土を足します。)
キクイモの露地栽培の土作りは種まき(苗の植え付け)の2週間前に終わらせておきましょう。苦土石灰100g/1㎡をまいて全体に混ざるように丁寧に耕しておきます。
種まき(苗の植え付け)の1週間前になったら、堆肥(2㎏/㎡)と化成肥料(100g/㎡)を畑の全面にまいて良く耕しておきましょう。
キクイモ栽培で作る畝は、畝幅は70~100cm(1条)で畝の高さは10~15cmの平畝です。
キクイモは直まきとポットまきができます。どちらも発芽させるのは難しくありませんが、発芽適温外に種をまくときはポットまきをして温度管理しながら育苗する方が確実です。
キクイモは適温内なら直植えでも発芽が揃いますが、発芽適温から大きく外れる時期はポットで種イモを芽出ししてから植え付けると失敗が少なくなります。
ポット植えでは苗が植え付けに適した大きさになるまで育苗してから畑に移植しましょう。
キクイモの植え付け(芽出し)の時期は3月下旬~5月中旬で、直植えは4月中旬~6月上旬です。
キクイモは20℃を下回らないと芋が肥大しないので、肥大時期を逆算して芽出しや直植えの時期を決定しましょう。
※種まき適期は栽培地の気候などによって前後します。
キクイモは15℃~20℃が発芽に適した温度です。
キクイモは発芽適温内なら14日~21日で発芽が始まります。発芽適温から外れていると日数は前後します。(もっと詳しく:キクイモが発芽しない原因と対策)
キクイモを種から育てるのが難しいと感じたら、園芸店などで売られている苗を購入して育ててみましょう。苗からだと収穫まで簡単に辿り着けます。
キクイモは、節間が狭く茎が太く葉の緑の濃いもの、害虫や病害の被害に遭っていないものが良い苗です。本葉が5~6枚になったものが植え付けに適した苗の大きさです。
キクイモの苗の植え付け適期は4月中旬~6月上旬です。
キクイモは20℃を下回らないと芋が肥大しないので、肥大時期を逆算して植え付け時期を決定しましょう。
※植え付け適期は栽培地の気候などによって前後します。
キクイモは15℃~25℃が生育がもっとも良くなる温度です。芋の肥大には20℃以下の温度条件が必要です。
キクイモの苗を植える間隔は50~60cmです。
キクイモの芽かき(間引き)はタイミングよく行いましょう。間引きの時期が早すぎると苗が徒長して軟弱になり、遅すぎると抜き取るときに隣の根を傷める原因になります。
キクイモの芽かき(間引き)は新芽が出なくなるまでこまめに行います。
植え付け後から新芽が次々と出てきますが、勢いのある芽を3本だけ伸ばして、他の芽は早い段階ですべて摘み取ってしまいましょう。
キクイモの株の間隔は50~60cmです。
苗が抜けないように残す苗の根元付近を指で軽く押さえて、不要な苗の根元を掴んで手で抜き取りましょう。
間引きが遅れて抜けにくいときは、ハサミで根元から切り取ってもかまいません。
キクイモは根が地上に露出すると太陽光で根を傷めてしまい、倒伏の原因になってしまいます。タイミングよく株元に土を寄せておきましょう。
水やりや降雨で用土は自然に減ってしまいます。根元周りの用土が減ってきたと感じたら土寄せをしましょう。
根が浅いと草丈が高くなったときに株が倒壊する原因になるのでこまめに土寄せするのがポイントです。
株周りの固くなった用土の表面を軽くほぐしてから株元に寄せておきます。プランター栽培では用土が減ってきたら新しい用土を足しましょう。
キクイモの倒伏対策には支柱立てが有効です。
キクイモは草丈が高くなると台風や強風などで根元から茎葉が折れてしまうことがあります。
植え付けから2か月もすると草丈は1m以上に成長します。台風の季節が来る前に早めに支柱を立てておきましょう。
キクイモの植え付け場所の周りを囲うように長めの支柱を何本か立てて、支柱同士を紐やロープで高さ30cmごとに何段か繋いでおきます。
キクイモの発芽には一定の高温が必要です。温度が15℃以下になると発芽に時間がかかるため、寒冷地での栽培や春先の気温が低い時期はマルチングをして地温を上げてやりましょう。
キクイモは温度が低いと発芽に時間がかかります。マルチングをすることで保温対策になり、発芽日数を短縮することができます。
また、キクイモ栽培では夏場以降の雑草取りが大変になります。マルチングをすることで雑草対策にもなります。
キクイモは成長にあわせて水やり方法を変えます。種まき後(苗の植え付け後)から約1週間程度はこまめに水やりをしますが、その後は用土の表面が乾いたタイミングで水やりをしましょう。
種イモから育てて発芽するまでの間は自然の雨だけで大丈夫ですが、プランター栽培では用土の表面が乾いたタイミングで水やりをします。
苗から植え付けたときは、約1~2週間は水切れにならないように用土の表面が乾いたタイミングでこまめに水やりをしましょう。
その後は用土の表面が乾くまで水やりは控えて、乾いたときにたっぷりと与えるようにします。
プランター栽培では1回の水やりで鉢底から染み出るくらいたっぷりと与え、露地栽培では1株あたり2~2.5Lが目安です。表面だけでなく用土の中に染み込むまで与えましょう。
キクイモの追肥は株の成長に合わせて与える肥料の種類と与える量を調整しましょう。キクイモは根の先端からもっとも吸肥します。プランターの淵や、畝間や株と株の間に肥料をまいて表面の用土と混ぜ合わせておきます。
キクイモは肥料の吸肥力が強いので追肥は基本的には必要ありません。元肥を中心に育てましょう。
夏以降に株が大きくなって根が充実する前に極度に痩せた土地(連作を続けている・古い用土を使っているプランター栽培など)のみ追肥をします。
肥料が多すぎると地上部の茎葉ばかりが大きくなって、地下塊(芋)が肥大しなくなります。
生育初期はチッソ分の割合が多めの肥料を与え、後半は、根を大きくするリン酸とカリの割合が多めの肥料に切り替えます。
1株あたり5から10gを与えましょう。用土全体に肥料をまいて軽くほぐしてから株元に土寄せしておきます。
1㎡あたり10~20gを与えましょう。列の両側に肥料をまいて用土をほぐして株元に土寄せしておきます。
キクイモの収穫のタイミングや収穫の目安を知って、もっとも美味しい頃合いに収穫しましょう。
キクイモは苗の植え付けから約6か月で収穫適期を迎えます。
キクイモの収穫時期を見た目で判断するときは、開花が終わり地上部が枯れてきたら収穫のタイミングです。
キクイモを収穫するときは、地上部を根元付近で鎌などを使って刈り取ります。
芋は根元から30cmくらい離れたところまで広がっているので、芋を傷付けないようにスコップなどで丁寧に外側から掘り起こして収穫しましょう。
土中に芋が残っていると翌年以降に芽が出てしまうので、掘り残さないようにするのがポイントです。
キクイモは保存があまり効かない野菜です。掘り起こしたあとは泥を付けたまま新聞紙で包んで冷蔵庫で保存しましょう。
数が多いときは掘り起こさずに埋めたままにしておくと2月頃までそのまま土中で貯蔵することができます。
キクイモにはさまざまな病害が発生します。病害の前兆を早く見つけることが大きな被害を防ぐことにつながります。早期の治療と再発防止対策をしっかりと行いましょう。
キクイモが病害になって薬剤で治療をすることは簡単ですが、健康を考えると薬漬けの野菜はあまりおすすめできません。
なぜ病害が発生したのか?その原因を突き止めて対策しないと何度も同じ症状が出てしまいます。
病害は治療するだけで終わりにせず、再発しない環境を作ることも同時に考えましょう。
キクイモ栽培でよく見かける病害は「べと病」「白絹病」「葉枯れ病」「萎凋病」「炭そ病」「モザイク病」などです。
キクイモの病害が出る主な原因は、日当たりが悪い、株元の葉が込み合って風通しが悪い、畑の排水性が悪く多湿になっている(または水やりが多い)などです。
キクイモの病害を予防するためには、多湿を避ける(適正な水やり)、日当たりのよい場所で育てる(適正な日照量)、摘葉や適正な株間の確保(風通しを良くする)、用土を丁寧に耕す(通気性と水はけの良い土壌作り)を心掛けましょう。
病害の対策しても何度も同じ症状が出るときは、用土中に病害の原因となる細菌類やウイルス類、線虫など悪影響のある微生物が残存している可能性があります。
露地栽培では太陽熱消毒や水張り消毒などの土壌消毒をする、プランター栽培では容器を消毒してから新しい用土に入れ替えるなどの方法を試してみましょう。
収穫前に害虫の被害に遭うと収量に大きく影響します。害虫を見かけたら早期に駆除することが被害を最小限に抑えるポイントです。害虫対策をしっかりと行って、害虫の集まりにくい環境を目指しましょう。
キクイモに発生しやすい害虫は、「ヨトウムシ」「ハモグリバエ」「アザミウマ」「アブラムシ類」などです。
キクイモは生育初期に害虫被害が出やすい傾向がありますが、株が大きくなってからの害虫被害はほとんどありません。
害虫は大きくなる前や数が増える前に早期に駆除することが大切です。葉の裏もよく観察して卵や幼虫を見つけたらすぐに捕殺しましょう。
害虫の数が増えて自力で駆除できなくなる前に、人体への影響が少ない薬剤を使うことも検討しましょう。
栽培時に出る残渣(落ち葉や枯葉)はこまめに撤去し、株元が込み合ったら摘葉して風通しを良くすることで、害虫の住処を減らすことができます。
キクイモの苗が小さい時期のトンネル掛けや不織布掛けは、害虫の飛来を予防する上でかなり有効な方法です。
自分の畑だけを対策しても、周辺の無対策の畑や雑草地に囲まれている畑などから害虫は次々と飛来してくるからです。
害虫を退治しても土中や物陰に潜んで残っています。害虫を残した状態でエサとなる野菜をすぐに植えると、永遠に害虫を絶滅させることはできません。
最低でも1年以上は害虫のエサとなる同じ科の野菜を植えないようにしましょう。害虫のエサをなくして完全に駆除することが大切です。
エサがなければ害虫は生きていくことができません。
害虫の住処や産卵場所となる雑草や野草をなくすことも有効な害虫対策になります。できれば自分の畝だけでなく、栽培地周辺の雑草も減らしておきましょう
実は害虫には好きな野菜と苦手な野菜があります。
キクイモに集まる害虫が嫌いな野菜を一緒に植えておくと害虫を退避させることができ、益虫(害虫を捕食する有益な虫)が集まる野菜を植えておくと害虫を駆除してくれます。
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