ヤマイモは春から秋が栽培時期で収穫まで約7か月です。深さ約10cmに種イモを植えて、支柱を立てて、つるを誘引しながら育てます。収穫までの作業は水やり・追肥・などです。
ヤマイモの育て方を野菜栽培士が詳しく解説します。
種イモの植え付け適期や苗の植え付け適期・収穫適期など栽培時期と土作り・苗作り・種イモの植え方・肥料の与え方・水やり方法・収穫までの栽培管理、病害虫対策など、画像と動画を使って丁寧に解説しています
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栽培難易度 ★★★☆☆
ヤマイモの育て方は容易ですが、栽培期間が長いので難易度は普通です。連作を避ければ大きな失敗はありません。品質の良い種イモ選びが栽培のポイントです。
ヤマイモはヤマトイモ科の根野菜で原産地は中国や日本です。多くの品種があり、関東ではヤマトイモ、関西ではツクネイモを中心に栽培されています。
ヤマイモは露地でしか栽培できないイメージがありますが、短系品種を選べばプランターや植木鉢でも栽培ができます。
ねばり成分は水溶性食物繊維によるもので、消化酵素のジアスターゼや抗酸化作用のサポニン、細胞を活性化するコリンなどを豊富に含みます。
中国では古くから漢方薬の材料としても利用されています。
ヤマイモは秋になると葉の付け根付近に「ムカゴ」をつけます。ムカゴはつるにつくイモのようなもので球芽といいます。
ムカゴは1年ほど畑で育てて、翌年以降の種イモを作ることができます。ムカゴは収穫までの大きさまで育つには数年かかります。
ムカゴは香りやコクがあり、ヤマイモに似た特有のぬめりがあるので、炊き込みご飯の具にしたり、素揚げにしたりして楽しみましょう。
栽培のコツは種イモ選びです。よい種イモからは品質の良いヤマイモが収穫できます。連作には弱く同じ場所で何度も栽培するとセンチュウの被害に遭いやすくなります。
地中深くに根を伸ばして収穫が大変ですが、パイプ栽培をすれば収穫が楽になります。
科名 | ヤマノイモ科 |
別名 | ナガイモ・自然薯・ヤマトイモ・ヤマノイモ・ツクネイモ・台湾ヤマイモなど |
草丈 | 60~100cm以上 |
連作障害 | あり(3~4年) |
適した場所 | 日がよく当たる風通しの良い場所 |
日当たり | 🌞 or 🌤 |
土壌酸度 | pH6.0~6.5 |
株間 | 60cm以上 |
条間 | 60cm以上 |
発芽適温 | 25~30℃ |
生育適温 | 20~30℃ |
苗植え付け時期 | 3月~5月 |
発芽日数 | 15日~20日 |
収穫時期 | 種まきから約7か月 |
ヤマイモの栽培時期は春~秋にかけてです。種イモの植え付けは3月~5月で、収穫までは植え付けから約7か月です。
ヤマイモには栽培地の風土や気候に合った品種が多くあります。基本的にはどの品種を選んでも栽培方法や育てやすさに違いはありません。
ヤマイモには「ナガイモ」「ヤマトイモ」「ツクネイモ」など品種が多くあります。栽培方法はどれを選んでも基本的には同じなので、好みで選んでも大丈夫です。
ナガイモはヤマイモの中でもっともメジャーな品種で、粘りが少なめで水分量が多いのでサラダなど生食や和え物に向いています。
プランター栽培に向いている品種は「台湾ヤマイモ」や「イチョウイモ」「ツクネイモ」など地中深くまで根が伸びない短形品種です。
ヤマトイモはイチョウイモやツクネイモとも呼ばれ、ナガイモよりも粘りがあり、和菓子の原料やとろろ汁などに利用されています。
「ナガイモ」をはじめ、「ジネンジョ」「イチョウイモ」などの総称を「ヤマノイモ」といいます。ちなみに自然薯は野生化したヤマイモのことです。
ヤマイモは地中深くに根を張るので基本的には露地での栽培が中心です。品種によってはプランターや植木鉢でも栽培が可能です。
ヤマイモの栽培をはじめる前にしておくことは、プランター栽培では「プランターと栽培用土の準備」、露地栽培では「土作り」と「畝作り」などです。
ヤマイモをプランターで栽培するときは「台湾ヤマイモ」や「イチョウイモ」「ツクネイモ」など短形品種を選びましょう。
栽培で利用するプランターサイズは中型(60cm)以上の深型を利用しましょう。1株植えなら12号サイズ以上の深型の植木鉢でも栽培ができます。
品種にもよりますが、中型サイズのプランター1つに対して1株の栽培が可能です。
ヤマイモ栽培で使う用土は市販の培養土を利用すれば土作りの必要がなく袋から開けてすぐに使えるのでとても便利です。
自分で用土を配合するときは、赤玉土(7):腐葉土(2):バーミキュライト(1)を混ぜたものを使いましょう。
そこに石灰を用土10Lあたり10~20gと化成肥料を用土10Lあたり10~20gを入れてよく耕しておきます。
プランターや植木鉢の底には、水はけを良くするために赤玉土や鉢底石などを数センチほど敷き詰めておきます。
種から育てるときは淵から5cmほどの位置まで用土を入れ、苗から育てるときは根鉢の高さを考慮して用土を入れておきましょう。(根鉢を置いてから残りの用土を足します。)
ヤマイモの露地栽培の土作りは種まき(苗の植え付け)の2週間前に終わらせておきましょう。苦土石灰100g/1㎡をまいて全体に混ざるように丁寧に耕しておきます。
根を深く張るので、30~40cmの深さまで、しっかりと耕しておきましょう。用土が固いとイモの形がイビツになります。
種まき(苗の植え付け)の1週間前になったら、堆肥(2㎏/㎡)と化成肥料(100g/㎡)を30~40cmの深さに仕込んでおきましょう。
ヤマイモ栽培で作る畝は、畝幅は40~50cm(1条)70~80cm(2条)で、畝の高さは10~15cmの平畝です。
ヤマイモは園芸店などで売られている品質の良い種イモを購入して育てましょう。芽出しをしてから植え付けると簡単です。
種イモは、1片を50~100gの大きさに切り分けておきます。細い部分は50~60g、太い部分は80~100gが目安です。
つる首付近から勢いのあるつるが伸びますが、このつるからは良いイモが採れないので、つる首部分は植え付けないようにするのがポイントです。
一部に包丁やへらなどで切り目を入れて手で折ります。
切り分けた種イモをポリポットに植えて、暖かな場所で芽出しをしてから畑に植え付けましょう。
ヤマイモの苗の植え付け適期は、3月~5月です。
※植え付け適期は栽培地の気候などによって前後します。
ヤマイモは25℃~30℃が発芽に適した温度です。
ヤマイモは発芽適温内なら15日~20日で発芽が始まります。発芽適温から外れていると日数は前後します。
低温だと発芽に1ヶ月以上かかります。(参考:ヤマイモが発芽しない原因と対策)
ヤマイモは20℃~30℃が生育がもっとも良くなる温度です。
気温が低いと生育は緩慢になりますが、日中の気温が20℃を超える頃から生育がよくなります。
ヤマイモの苗を植える間隔は60cm以上です。
ヤマイモは地下に長く根を伸ばすので収穫が大変です。パイプを使ったパイプ栽培なら収穫時の労力が少なく済みます。
直径10cm~15cmのパイプを1mほどの長さに切って用土を詰めて畑に寝かせて種イモを植えましょう。
ヤマイモは根が地上に露出すると太陽光で根を傷めてしまい、生育不良の原因になってしまいます。タイミングよく株元に土を寄せておきましょう。
水やりや降雨で用土は自然に減ってしまいます。根元周りの用土が減ってきたと感じたら土寄せをしましょう。
根が完全に露出すると株の生育に影響するので早めに土寄せするのがポイントです。
株周りの固くなった用土の表面を軽くほぐしてから株元に寄せておきます。プランター栽培では用土が減ってきたら新しい用土を足しましょう。
ヤマイモはつる性の植物です。支柱を立てて空中栽培しましょう。支柱を立てる時期は種イモが発芽し始めたときです。
ヤマイモは放任で育てるとつるがあちこちに伸びて大変なことになります。支柱を立ててつるを上へと誘引しながら育てましょう。
ヤマイモ栽培では株の北側へ30cmほど離れた位置に約2mの長さの支柱を立てておきます。
生育初期はこまめに観察して成長に合わせて伸びたつるを誘引してやりましょう。らせん状に支柱に絡ませて上へと誘引します。
ヤマイモは成長にあわせて水やり方法を変えましょう。植え付けから発芽までの水やりは不要で、その後は自然の降雨のみで育てます。プランターや植木鉢での栽培のみ、用土の表面が乾いたタイミングで水やりをします。
ヤマイモは地中深くに根を伸ばすので乾燥には強い野菜です。基本的には自然の雨だけで十分です。生育初期の根が浅い時期のみ用土の表面が乾いたタイミングで与えます。
それ以降の水やりは控えめにしましょう。
プランターや植木鉢で栽培しているときは、用土の表面を一旦、乾燥させてから水やりをします。毎日与える必要はありません。
プランター栽培では1回の水やりで鉢底から染み出るくらいたっぷりと与え、露地栽培では1株あたり2.0~2.5Lが目安です。表面だけでなく用土の中に染み込むまで与えましょう。
ヤマイモの追肥は株の成長に合わせて与える肥料の種類と与える量を調整します。まっすぐ下に向かって根を張るので、株周辺に肥料をまき、表面の用土と軽く混ぜ合わせてから株元に寄せておきましょう。
ヤマイモの追肥はつるの状態を見て判断しましょう。苗を植え付けてしばらくは元肥のみで育てます。
その後はつるの状態を見て、つるの伸びが悪い場合のみ、梅雨が明けた頃に追肥を施します。
葉が黄色くなったときや新しいつるが出なくなったときは肥料不足のサインです。
生育初期はチッソ分の割合が多めの肥料を与えて株を大きく育てます。開花が始まった根を大きくするリン酸とカリの割合が多めの肥料に切り替えましょう。
1株あたり約5~10gを与えましょう。用土全体に肥料をまいて軽くほぐしてから株元に土寄せしておきます。
薄めた液肥を水やりを兼ねて与えてもかまいません。
化成肥料を20~30g与えましょう。表面の用土と軽く混ぜ合わせて、株の半径30cmの円状に土寄せしておきます。
ヤマイモの収穫のタイミングや収穫の目安を知って、もっとも美味しい頃合いに収穫しましょう。
ヤマイモは植え付けから約7か月(11月以降)で収穫適期を迎えます。ムカゴは晩夏(9月~10月頃)が収穫のタイミングです。
ヤマイモの収穫時期を見た目で判断するときは、晩秋になって地上部の茎葉が黄色く枯れたときが収穫のタイミングです。
株元でつるを切り取って支柱を先に抜きます。株元から約30cm離れた位置にスコップを入れて、株元付近に向かって少しずつ穴を広げていきます。
肥大した根の先が見えてきたら、途中でイモを折らないように丁寧に掘り出して収穫しましょう。
掘り出したイモは日陰で約1週間干してから利用します。
ムカゴは指でつまむようにして収穫しましょう。ムカゴは地上に落ちると芽が出てしまいます。株元にビニールシートなどを敷いておくと自然発芽を防げます。
晩秋以降に地上部が枯れたら収穫しますが、掘り起こさずにそのまま埋めておけば、翌年の2月頃までなら土中で保存ができます。
3月以降に気温が上がり始めると芽が出てしまうので、それまでに抜き取って収穫を終わらせましょう。
ヤマイモにはさまざまな病害が発生します。病害の前兆を早く見つけることが大きな被害を防ぐことにつながります。早期の治療と再発防止対策をしっかりと行いましょう。
ヤマイモが病害になって薬剤で治療をすることは簡単ですが、健康を考えると薬漬けの野菜はあまりおすすめできません。
なぜ病害が発生したのか?その原因を突き止めて対策しないと何度も同じ症状が出てしまいます。
病害は治療するだけで終わりにせず、再発しない環境を作ることも同時に考えましょう。
ヤマイモ栽培でよく見かける病害は「モザイク病」「炭そ病」「褐色腐敗病」「根腐れ病」「葉渋病」などです。
ヤマイモの病害が出る主な原因は、日当たりが悪い、株元の葉が込み合って風通しが悪い、畑の排水性が悪く多湿になっている(または水やりが多い)などです。
ヤマイモの病害を予防するためには、多湿を避ける(適正な水やり)、日当たりのよい場所で育てる(適正な日照量)、摘葉や適正な株間の確保(風通しを良くする)、用土を丁寧に耕す(通気性と水はけの良い土壌作り)を心掛けましょう。
病害の対策しても何度も同じ症状が出るときは、用土中に病害の原因となる細菌類やウイルス類、線虫など悪影響のある微生物が残存している可能性があります。
露地栽培では太陽熱消毒や水張り消毒などの土壌消毒をする、プランター栽培では容器を消毒してから新しい用土に入れ替えるなどの方法を試してみましょう。
収穫前に害虫の被害に遭うと収量に大きく影響します。害虫を見かけたら早期に駆除することが被害を最小限に抑えるポイントです。害虫対策をしっかりと行って、害虫の集まりにくい環境を目指しましょう。
ヤマイモに発生しやすい害虫は、「マメコガネ」「キイロスズメ」「ヤマノイモコガ」「ヨトウムシ」「ハダニ類」「ネコブセンチュウ」などです。
害虫は大きくなる前や数が増える前に早期に駆除することが大切です。葉の裏もよく観察して卵や幼虫を見つけたらすぐに捕殺しましょう。
害虫の数が増えて自力で駆除できなくなる前に、人体への影響が少ない薬剤を使うことも検討しましょう。
栽培時に出る残渣(落ち葉や枯葉)をこまめに撤去することで、害虫の住処を減らすことができます。
株元のつるが込み合わないように支柱を立てたり、不要な茎葉を摘葉して風通しを良くすることが害虫の対策になります。
ヤマイモはセンチュウの被害が出やすい傾向があります。
害虫は退治しても土中や物陰に潜んで残っています。害虫を残した状態でエサとなる野菜をすぐに植えると、永遠に害虫を絶滅させることはできません。
最低でも1年以上は害虫のエサとなる同じ科の野菜を植えないようにしましょう。害虫のエサをなくして完全に駆除することが大切です。
エサがなければ害虫は生きていくことができません。
害虫の住処や産卵場所となる雑草や野草をなくすことも有効な害虫対策になります。できれば自分の畝だけでなく、栽培地周辺の雑草も減らしておきましょう
実は害虫には好きな野菜と苦手な野菜があります。
ヤマイモに集まる害虫が嫌いな野菜を一緒に植えておくと害虫を退避させることができ、益虫(害虫を捕食する有益な虫)が集まる野菜を植えておくと害虫を駆除してくれます。
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