ワケギは夏から翌年の春までが栽培時期で収穫まで約3~6か月です。上部が少し出る深さで種球を植えて、過湿と乾燥に注意しながら栽培します。収穫までの作業は水やり・追肥・土寄せなどです。
ワケギの育て方を野菜栽培士が詳しく解説します。
種まき適期や植え付け適期・収穫適期など栽培時期と土作り・種まき・苗作り・肥料の与え方・水やり方法・収穫までの栽培管理、病害虫対策など、画像と動画を使って丁寧に解説しています。
Contents Menu
栽培難易度 ★★☆☆☆
ワケギはほとんど手間が掛からない育てやすい難易度の低い野菜です。耐寒性が弱く寒冷地では越冬できないので中間地より以西が栽培に適しています。
ワケギはユリ科の葉野菜でネギよりも細く柔軟で独特の香りと風味があります。ワケギはネギとタマネギ(シャロット)の交雑種で、漢字で書くと「分葱」です。
ワケギは見た目も利用方法も葉ネギに似ていますが、ネギよりも葉が柔らかく特有の香りや風味があることから和え物やぬたなどで利用されます。
もちろん、薬味としてや炒めもの、汁の具など葉ネギと同じように使うことができます。
地上部の茎葉を刈り取って収穫すれば、シーズン中は何度でも収穫を楽しめます。ワケギは名前の通り、鱗茎と呼ばれる地中にできる種球を株分けして増やしていきます。
ワケギは秋に種球を植えて翌年の春以降に収穫しますが、休眠性がないので、トンネル栽培やハウス栽培をすれば1年中栽培ができます。
九条系ネギ品種を若採りした細ネギのことをワケギと呼ぶことがありますが、市場ではこれを「小ネギ」と呼んで区別しています。
ちなみにワケギは、関西地方で栽培される品種が「ワケギ」と呼ばれ、関東地方で栽培される品種が「ワケネギ」と呼ばれています。
ワケギは西日本で多く栽培されている「夏季は鱗茎を作って休眠し、抽苔も開花も結実もしない栄養繁殖性のネギ」と、関東地方で多く栽培されている「休眠せずに抽苔も開花もほとんどしない、分けつによる栄養繁殖性のネギの2種類あります。
科名 | ユリ科 |
別名 | 分葱・ワケネギなど |
草丈 | 40~60cm |
連作障害 | あり(2~3年) |
適した場所 | 日がよく当たる風通しの良い場所 |
日当たり | 🌞 or 🌤 |
土壌酸度 | pH6.0~6.5 |
株間 | 10~15cm以上 |
条間 | 30~40cm |
発芽適温 | 15~20℃ |
生育適温 | 15~20℃ |
植え付け時期 | 7月~9月 |
発芽日数 | 発芽時期が来たら芽が出る |
収穫時期 | 植え付けから約3~6か月 |
ワケギの栽培時期は夏から翌年の春までです。種球の植え付けは7月~9月で、収穫までは植え付けから約3~6か月です。
ワケギは種球から育てるのでとくに品種はなく、栽培地の風土や気候に合った改良品種があります。基本的にはどの品種を選んでも栽培方法や育てやすさに違いはありません。
ワケギは品種は分化していないため、特に品種名はついていません。
各地でさまざまな系統が選別されて利用されていて、早生種や晩生種、耐暑性が高いもの、耐寒性が高いものなどがあります。
ワケギはプランター栽培と露地栽培が可能で、直まきとポットで育苗してから畑に移植する方法があります。
ワケギの栽培をはじめる前にしておくことは、プランター栽培では「プランターと栽培用土の準備」、露地栽培では「土作り」と「畝作り」などです。
ワケギ栽培で利用するプランターサイズは中型(60cm)以上のものを利用しましょう。1株植えなら10号サイズ以上の深型の植木鉢でも栽培ができます。
品種にもよりますが、中型サイズのプランター1つに対して8~10株程度の栽培が可能です。
ワケギ栽培で使う用土は市販の培養土を利用すれば土作りの必要がなく袋から開けてすぐに使えるのでとても便利です。
自分で用土を配合するときは、赤玉土(7):腐葉土(2):バーミキュライト(1)を混ぜたものを使いましょう。
そこに石灰を用土10Lあたり10~20gと化成肥料を用土10Lあたり10~20gを入れてよく耕しておきます。
プランターや植木鉢の底には、水はけを良くするために赤玉土や鉢底石などを数センチほど敷き詰めておきます。
種から育てるときは淵から5cmほどの位置まで用土を入れ、苗から育てるときは根鉢の高さを考慮して用土を入れておきましょう。(根鉢を置いてから残りの用土を足します。)
ワケギの露地栽培の土作りは種まき(苗の植え付け)の2週間前に終わらせておきましょう。苦土石灰100g/1㎡をまいて全体に混ざるように丁寧に耕しておきます。
種まき(苗の植え付け)の1週間前になったら、堆肥(2㎏/㎡)と化成肥料(100g/㎡)を畑の全面にまいて良く耕しておきましょう。
ワケギ栽培で作る畝は、畝幅は30cm(1~2条)50~70cm(3条以上)で畝の高さは10~15cmの平畝です。
ワケギは畑に種球を植えつける前にしっかりと準備をしておけば発芽は難しくありません。
ワケギの種球は日の当たらない風通しのよい場所に置いておくと萌芽します。
萌芽が始まったら種球を半日ほど太陽光に当てましょう。下記の作業がやりやすくなります。
植える前に種球を2~3球ずつに分けておきます。植えやすいように1球ずつに分けても大丈夫です。
外側の皮を剥いておきます。ワケギの外皮は撥水性があるので、そのまま植えると吸水性が悪くなって発芽が遅れます。
先端の枯れている部分は切り取っておきましょう。
ワケギの種球を植える準備が整ったら植え付けをしましょう。ワケギは植え付け方を間違えると萌芽が遅れるので、正しく植え付けるのがポイントです。
ワケギの種球を選ぶときの注意点は、優良な系統を選び、病害に強いウイルスフリーのものを利用することです。
自家繁殖を何度も繰り返したものは、品質や収穫量が減り、野外で栽培している親株がウイルス病に感染していることがあります。
種球の表面が腐っているものや傷んでいるものは使わないようにしましょう。
ワケギの苗の植え付け適期は、7月~8月です。適期になると自然と萌芽するので慌てて植える必要はありません。
※植え付け適期は栽培地の気候などによって前後します。(もっと詳しく:ワケギが発芽しない原因と対策)
ワケギは15℃~20℃が発芽しやすい温度です。
ワケギの苗を植える間隔は10~15cmです。
ワケギは根が地上に露出すると太陽光で根を傷めてしまい、生育不良の原因になってしまいます。タイミングよく株元に土を寄せておきましょう。
水やりや降雨で用土は自然に減ってしまいます。根元周りの用土が減ってきたと感じたら土寄せをしましょう。
根が完全に露出すると株の生育に影響するので早めに土寄せするのがポイントです。
株周りの固くなった用土の表面を軽くほぐしてから株元に寄せておきます。プランター栽培では用土が減ってきたら新しい用土を足しましょう。
寒冷地でのワケギの防寒対策にはトンネル掛けと敷き藁が有効です。
ワケギは耐寒性が低いため、寒冷地ではそのままでは冬越しができません。冬季は収穫を止めて保温対策をして冬越しさせましょう。
11月以降から3月上旬までは低温で株の生育が悪くなり、また霜が降りると霜枯れの原因になるため、敷き藁を敷いて透明のビニール掛けをして霜対策と保温対策をします。
ただし、耐寒性のある品種を植えている場合や、中間地以西では基本的に保温しなくても冬越しできます。
ワケギは成長にあわせて水やり方法を変えます。種まき後(苗の植え付け後)から約1週間程度はこまめに水やりをしますが、その後は用土の表面が乾いたタイミングで水やりをしましょう。
ワケギは極度の乾燥と多湿を嫌うのでタイミングよく水やりをするのがポイントです。
毎日様子を見て、用土の表面が乾いてきたらたっぷりと水を与えるようにしましょう。
種球の植え付け直後は水をたっぷりと与えますが、その後は茎葉の成長に勢いがつくまでは量を少なめにします。
芽出しせずに植えた場合は、水やりのし過ぎで種球が土中で腐ってしまうことがあります。
プランター栽培では1回の水やりで鉢底から染み出るくらいたっぷりと与え、露地栽培では1株あたり1.5~2Lが目安です。表面だけでなく用土の中に染み込むまで与えましょう。
ワケギの追肥は株の成長に合わせて与える肥料の種類と与える量を調整しましょう。ワケギは根の先端からもっとも吸肥します。プランターの淵や、畝間や株と株の間に肥料をまいて表面の用土と混ぜ合わせておきます。
ワケギの追肥時期ですが、苗を植え付けて草丈が10~15cmになった頃からスタートさせましょう。
その後の追肥は収穫まで不要です。茎葉の状態を見て必要なときのみ与えます。葉が黄色くなったときや新葉が出なくなったときは肥料不足のサインです。
生育初期から収穫まで即効性のあるチッソ分の割合が多めの肥料を与えて株を大きく育てましょう。
1株あたり5~10gを与えましょう。用土全体に肥料をまいて軽くほぐしてから株元に土寄せしておきます。
薄めた液肥を1週間に1度のタイミングで水やりを兼ねて与えてもかまいません。
1㎡あたり20~30gを与えましょう。列の両側に肥料をまいて用土をほぐして株元に土寄せしておきます。
ワケギの収穫のタイミングや収穫の目安を知って、もっとも美味しい頃合いに収穫しましょう。
ワケギは種球の植え付けから約3か月で収穫適期を迎えます。目安は11月下旬から12月上旬です。
ワケギの収穫時期を見た目で判断するときは、草丈が20cmを超えたら収穫のタイミングです。
ワケギの収穫方法は「摘み取り収穫」と「刈り取り収穫」があります。
ワケギは上部の葉だけを刈り取って利用すれば、ふたたび葉が伸びるので株採り収穫はしません。
摘み取り収穫は必要な量だけ若い葉を切り取って収穫し、刈り取り収穫は株元を残して地上部だけ刈り取って収穫します。
ワケギは春まで2~3回ほど収穫を繰り返すことができます。
12月後半から2月頃までは低温で生育が緩慢になるので、この期間は収穫をストップします。
3月~4月(寒冷地では12月以降)になると、地上部がしだいに枯れ始めます。地上部が枯れたら収穫は終わりです。
ワケギは株を増やしたいときは種球を掘り上げて増やすことができます。収穫時期が終わったら株ごと掘り上げて株を増やしましょう。
ワケギの種球の掘り上げは5月~6月頃で、地上部の葉が枯れたときがタイミングです。
ワケギにはさまざまな病害が発生します。病害の前兆を早く見つけることが大きな被害を防ぐことにつながります。早期の治療と再発防止対策をしっかりと行いましょう。
ワケギ栽培でよく見かける病害は「さび病」「萎凋病」「萎縮病」「条斑病」「べと病」「白絹病」「軟腐病」などです。
ワケギが病害に掛かる主な原因は、日当たりが悪い、株元の葉が込み合って風通しが悪い、畑の排水性が悪く多湿になっている(または水やりが多い)などです。
ワケギの病害の発生を予防するためには、多湿を避ける、日当たりのよい場所で育てる、適正な株間の確保を行う、用土を丁寧に耕して水はけの良い土壌作りを心掛けましょう。
収穫前に害虫の被害に遭うと収量に大きく影響します。害虫を見かけたら早期に駆除することが被害を最小限に抑えるポイントです。害虫対策をしっかりと行って、害虫の集まりにくい環境を目指しましょう。
ワケギに発生しやすい害虫は、「ヨトウムシ」「ハモグリバエ」「アブラムシ」「ネダニ」「アザミウマ」「ネコギガ」「マエアカヒトリ」などです。
害虫は大きくなる前や数が増える前に早期に駆除することが大切です。葉の裏もよく観察して卵や幼虫を見つけたらすぐに捕殺しましょう。
栽培時に出る残渣(落ち葉や枯葉)はこまめに撤去し、株元が込み合ったら摘葉して風通しを良くすることで、害虫の住処をなくすことができます。
ワケギの苗が小さい時期や気温が高い時期の追肥は控えましょう。高温期のチッソ分の与え過ぎは害虫を呼び寄せてしまうからです。追肥は気温が下がってからスタートさせます。
害虫の数が増えて自力で駆除できなくなる前に、人体への影響が少ない薬剤を使うことも検討しましょう。
▷家庭菜園で簡単野菜作りVegetablesBeginnersGuide!
YouTubeの動画でも野菜の育て方や野菜作りのコツなどを分かりやすくご紹介しています。チャンネル登録おすすめです。