インゲンマメの栽培時期と土作り、種まき、間引き、植え付ける時期、支柱立て・摘芯や摘葉のやり方、追肥、水やり、病害と害虫の対策など、収穫までの作業を野菜栽培士が分かりやすく解説します。
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インゲンマメは病害虫に強く、前作の野菜を育てた後なら、肥料がなしも育つほど丈夫で初心者向けです。
インゲンマメ(大角豆)は中央アメリカ原産の野菜で、江戸時代に隠元ン禅師によって伝えられたとされています。明治以降に欧米から多くの品種が輸入されました。
インゲンマメはつる性の植物ですが、つるなし品種もあるのでプランターや植木鉢でも簡単に育てることができます。
科名 | マメ科 |
別名 | 花豆・菜豆・サイトウ・三度豆・サンドマメ・隠元豆など |
草丈 | 45~50cm |
連作障害 | あり(2~3年) |
適した場所 | 日がよく当たる風通しの良い場所 |
日当たり | 🌞 or 🌤 |
土壌酸度 | pH5.5~6.5 |
株間 | 30cm以上 |
畝幅 | 50~70cm |
畝高 | 15cm(平畝) |
発芽適温 | 22~25℃ |
生育適温 | 20~25℃ |
種まき時期 | 3月~6月 |
発芽日数 | 3日~5日 |
苗植え付け時期 | 4月~6月 |
収穫時期 | 種まきから約2.5か月 |
インゲンマメには寄せ植えできるコンパニオンプランツがあります。相性の良い野菜を組み合わせれば、同じ場所でたくさんの野菜を育てることができます。(もっと詳しく:インゲンマメと相性の良いコンパニオンプランツ)
インゲンマメは春(3月~5月)が栽培時期です。種まきはポットまきは3月下旬以降で直まきは5月以降です。苗の植え付け時期は4月中旬以降です。
収穫時期は種まきから約2か月半、苗を植え付けてから約2か月です。
インゲンマメは丈夫で育てやすい野菜です。どの品種を選んでも失敗は少なめです。
インゲンは大きく分けると「有限型(わいせい種) 」というつるあり種と「無限型」という半つる性種・つる性種があります。
つるあり種のおすすめの品種は「モロッコ」「ケンタッキー101」「日光つるあり菜豆」などです。
つるなし種のおすすめの品種は「初みどり」「さつきみどり」「テンダーグリーン」などです。
その他、早生種(収穫までが短い)、晩生種(収穫までが長い)に分かれます。栽培する環境や場所に合わせて品種を選ぶと良いでしょう。
インゲンマメはプランター栽培でも露地栽培でも育てることができます。インゲンマメ栽培の準備から収穫までの流れを丁寧に解説します。
インゲンマメの栽培を始める前にしておくことは、「道具と栽培用土の準備」栽培地の「土作り」「畝作り」などです。
インゲンマメを栽培するときのプランターは標準~大型サイズを使用しましょう。プランターの代わりに大型の植木鉢でも育てることも可能です。
インゲンマメは大株に育てるなら大型のプランターを利用して1株植えにしましょう。
狭いスペースに苗をたくさん植えると、1株あたりの収穫量が減ってしまうだけでなく実も小さくなってしまいます。
インゲンマメ栽培で使う用土は市販の培養土を利用すると袋から開けてすぐに使えて便利です。葉野菜用で肥料入りの用土がおすすめです。
自分で用土を配合するときは、赤玉土7:腐葉土2:バーミキュライト1、それに石灰を用土10ℓ当たり10~20gと化学肥料を用土10ℓ当たり10~20gを混ぜ合わせたものを用意しましょう。
インゲンマメは多湿を嫌うので、プランターの底には鉢底石などを入れて水はけを良くしておきます。
入れる用土の量は、プランターの淵からウォータースペースを残して、鉢の8分目程度(淵から2~3cm)です。
畑(菜園)でインゲンマメを育てるときは、植え付けの2週間前までに酸度調整を終わらせておきましょう。
インゲンマメを露地で育てるときの土作りですが、種まきの約2週間前になったら、石灰を150g/㎡・堆肥を2kg/㎡・化成肥料を(15:15:15)150g/㎡を畑に施してよく耕しておきます。
インゲンマメに適した畝は、2条植え(2列)は畝幅が70~90cm、畝の高さは15cmの平畝です。
インゲンマメは直まきとポットまきのどちらも可能です。気温が低い地域での春まき栽培や早採り栽培するとき、鳥害が心配な地域ではポットまきします。
インゲンマメは苗の移植を嫌うので、基本的には直まきで育てる野菜です。ポットまきするときは本葉が3~4枚になる頃に畑に植え付けましょう。
インゲンマメの種まきは、ポットまきは3月下旬以降、直まきは5月以降です。(温暖地は4月以降・寒冷地は5月中旬以降)
インゲンマメ高温を好み、発芽適温は22~25℃です。直まきでは日中の気温が20℃を超えるようになったら種まきをスタートしましょう。
インゲンマメの種は温度が高すぎても発芽しません。気温が25℃を超えるときは、日よけや反日蔭になる場所で種まきをするなどの高温対策がおすすめです。
露地栽培では株間を30cm以上、畝間120cm以上空けしょう。プランター栽培の場合はプランター1つに多くても2株まで、株と株の間隔は20cm以上確保しておきます。
インゲンマメを直まきするときは、1か所あたり3~4粒の種をまきましょう。
種をまく深さは、種の長さの2~3倍(約10mm)が目安です。インゲンマメの種は鳥害に遭いやすいので、不織布などをべた掛けしておくと対策になります。
インゲンマメをポットまきでは、1つのポットに対して2~3粒の種をまきます。
種をまく深さは、種の長さの2~3倍(5~10mm)が目安です。
インゲンマメは本葉が2枚になったら、生育の良いものを2本残してすべて間引いてしまいます。
間引いたあとは日当たりの良い15℃以上をキープできる場所で、植え付けに適した大きさ(本葉が3~4枚)になるまで育苗しましょう。
・インゲンマメは間引きの時期が遅れると、苗が大きくなりすぎて間引きのときに絡まった根が切れる原因になります。
・あまり早く苗を間引いてしまうと、育苗途中で苗が枯れたり萎れたりしたときに苗不足で困ることになります。
植える株数が少ない方や初心者の方は園芸店で販売されているポット苗から育てましょう。失敗が少なくなります。
インゲンマメの良い苗の選び方ですが、背丈が高いものよりは背丈が低くて節間の詰まったものが良い苗です。
インゲンマメは移植を嫌うので、本葉が3~4枚までの大きさの苗を選ぶのがポイントです。
大きすぎる苗、葉が縮れていない苗、葉の萎れや枯れがなく青々とした苗、害虫の被害に合っていない苗を選びましょう。
4月下旬~5月(温暖地は約1ヶ月早め、寒冷地は約1ヶ月遅めになります。)日中の気温が20℃を超える頃です。
苗と苗の間隔(株間)を30cm以上(プランターは20cm以上)確保して植え付けましょう。
インゲンマメの苗の植え方ですが、まず苗を植える場所にポットの円の2~3倍の大きさの穴を掘ります。深さはポットの高さより少し低めです。
プランターの場合は穴を掘りにくいので、最初から用土の量をポットの高さ分だけ減らしておいて、苗を置いたあとにあとから用土を足します。
穴の底を平らにすることがポイントです。凸凹していると根と用土が密着しにくくなって、苗が根付くまで時間がかかってしまうからです。
苗を植え付けたら株元を手のひらで軽く押さえておきましょう。苗は2本のまま植え付けます。
ポットからインゲンマメの苗を取り出すときは、根鉢が崩れないように株の根元を指で挟み優しく扱いましょう。
・植え付けは晴れ日の午前中を選ぶと、根がうまく活着(根付くこと)します。
・苗を植え付けたら株元を手のひらで軽く押さえて用土と根を密着させておくと活着がよくなります。
苗を植え付けた後は根付く(定着)までの間(約1週間)は毎日土の中にしみ込むように水分をたっぷりと与えて下さい。
苗の生育が盛んになる時期に、露出した根に太陽光が直接当たると株の生育を弱める原因になります。
間引きや追肥のタイミングで株周辺の用土の表面を軽く耕して株元に土を寄せておきましょう。プランターの場合は水やりで用土が減りやすいので、定期的に用土を足します。
インゲンマメは茎が細く柔らかいため、風や強い雨によって株が倒れてしまいます。タイミングよく支柱を立ててやりましょう。
インゲンマメはつるが伸びてきたら数本の支柱を垂直に立てて、つる先を麻紐などを使って誘引してやります。つるあり種は網目10cm角以上のネットを張っておくとより安定します。
つるなし種は基本的に支柱がなくても大丈夫ですが、草丈が高くなったら支柱を立てておくと、収穫がしやすくなり病害のリスクも減るので安心です。
実がたくさん着くと株が倒れてしまうため、高さがあり太くて丈夫な支柱を立てるのがポイントです。
インゲンマメは正しい水やりを行うと健康な苗に育ち、立派な果実を実らせることができます。
用土の表面が乾いたタイミングで水やりを行います。プランターや植木鉢で育てる時は露地栽培に比べて用土が乾燥しやすいので注意してください。
真夏の水やりは朝または夕方の涼しい時間帯に、春先の寒い時期は気温が上がり始める時間帯に水やりを行いましょう。
開花が始まるまでの水やりは、回数を少なめにして一回の水やりで量を多めに与えと効果的です。
果実がなり始めたら水切れにならないように水やり量を多めにしましょう。(もっと詳しく:インゲンマメの正しい水やり方法)
インゲンマメは収穫期の途中で肥料切れを起こしてしまうと鞘が小さくなったり実入りが少なくなってしまいます。追肥の時期と与える量を調整しながらしっかりと行いましょう。
インゲンマメは苗を植え付けて約1ヶ月経った頃が1回目の追肥のタイミングです。2回目以降の追肥は2週間に1回の頻度で行います。
プランター栽培では、1株あたりに化成肥料を5~10g株の周辺にパラパラとまいて用土とまぜておきます。露地栽培では化成肥料を20~30g畝の肩に施しましょう。
・インゲンマメは前作の野菜の後なら、元肥と追肥がなくても育てられます。元肥を入れる場合は、窒素分の少ないものを選ぶようにしましょう。
肥料が多すぎるとつるボケの原因となって実なりが悪くなるので与えすぎに注意しましょう。(参考:インゲンマメの実がならない・インゲンマメの実が小さい原因と対策)
・果実がなり始めたら、水やりを兼ねて週に1回薄めの液肥を与えるのも効果的です。
インゲンマメは品種にもよりますが、開花してから約10~15日で収穫適期になります。
インゲンマメは鞘の長さが12cmを超えたら、中の豆が膨らまないうちに収穫しましょう。
青鞘の時に収穫すればインゲンマメのように皮ごと食べることが出来ます。開花数日後の小さな若鞘を軽く茹でてサラダにするのもおすすめです。
赤飯やぜんざいなどに使う場合は、鞘が茶色く枯れた時が収穫適期になります。タイミングを逃すと鞘が割れて、中の豆が畑にこぼれ落ちるので注意しましょう。
収穫後のインゲンマメは瓶などに入れておけば長期間の保存が可能です。
鞘の根元からハサミで切り取って収穫します。株が小さいときは株ごと抜き取ってあとから実をハサミで切ってもかませいません。
赤飯やぜんざいなどに使う場合は、株ごと抜き取って新聞紙などの上に広げて十分に乾燥させてから鞘から取り出しましょう。
・インゲンマメは株を疲れさせないようにするため、熟した実を早めに収穫するように心掛けましょう。軽く塩ゆでしておけば冷凍保存が可能です。
インゲンマメの病害を予防するには「高温多湿」「多肥」「日照不足」を避け、早期発見と早期対策がポイントです。
インゲンマメは他のマメ科の野菜に比べて病害には強い野菜ですが、稀に「モザイク病」「苗立ち枯れ病」「菌核病」「さび病」「角斑病」などが発生します。
病害を防ぐためには、日当たりと風通しのよい場所で育て高温多湿の環境にならないようにする・カメムシなどの吸汁害虫を早めに駆除するなどの対策をしっかりと行いましょう。
病害で黄色くなってしまった茎葉は枯れてしまう前に切り取り、被害が株全体に広がってしまったときは株ごと抜き取って必ず場外で処分しましょう。
茎葉が枯れてカラカラになると、風や雨(水やり)で菌やウイルスが他の株へ飛散したり土壌中に落ちて被害が拡大する原因となります。
インゲンマメの害虫対策は早期発見と早期駆除が大切です。数が増える前にしっかりと対策しましょう。
インゲンマメに発生しやすい害虫は「アブラムシ」と「カメムシ」です。
成虫は他の畑や雑草地から飛来してくるため完全な予防は困難です。数が増えて手に負えなくなったら薬剤の散布を検討しましょう。
トンネル掛けや根元の葉が込み合わないように摘葉する、住処になる畑周辺の雑草を抜く・落ち葉や枯れた葉を畑に放置しないなどが基本的な対策になります。
▷簡単野菜作りVegetablesBeginnersGuide